国会議員になる前、金融機関の法務部門で働いていました。社内の様々な部署から日々法律相談を受けました。とくに悩ましかったのは、営業部門から寄せられる「前例のない取引」に関する相談です。他社でも前例のない取引は、実行すれば大きな利益を生む可能性が高いものです。反面で、取引先など関係者と法的紛争となるリスクや、法律に反しなくても社会的に批判されるリスクが高い場合が多く、長い目で見れば損失を被ったり、信用を失ったりする危険があります。

私は、そのような危険を極力なくして企業経営を健全に保つため、問題点があればきちんと指摘しましたし、営業部門の方も取引を見送るなど、法務部門の意見を尊重してくれました。森友学園との土地取引についても、財務省の法務部門は法的な問題点を指摘していました。しかし、取引を担当する部局はこれを無視し、売却価格の大幅値下げをはじめ異例づくめの取引を実行しました。民間企業以上に法律と信用を重んじるはずの財務省でなぜこんなことが行われたのか、文書改ざん問題と併せて、証人喚問などで明らかにすべきです。

さて、法律相談は一般社会でも広く行われています。とくに、大きな災害の後では、法的紛争を防ぐだけでなく、パニックを防いだり、精神的な安定をもたらしたりする意味でも重要な役割を果たします。加えて、多数の法律相談に向き合うことにより、被災者がどういう悩みを抱えているかという情報を集める役割や、被災者を支援するための新たな制度や予算の必要性を根拠づける役割も果たします。

東日本大震災の後、私が所属する岩手弁護士会などが被災地で無料の法律相談を実施し、その活動の成果として、ご遺族となった被災者の相続熟慮期間を延長する法律や、義援金などが借金の差押え対象とならないようにする法律が国会で成立しました。23日に、衆院法務委員会では、被災者が無料で法律相談を受けられる「法テラス特例法」の3年間延長を全会一致で決めました。しかし、震災から7年が経過して被災地への関心は薄れがちで、震災直後のように被災者の声を反映した法律を作ろうという気運が乏しいのが現実です。

そこで採決の前に発言の機会を頂き、私は、被災者向けの法律相談の役割や意義に触れながら、「復興の風化を防ぎ、加速させていくため、被災者から寄せられる多数の法律相談の内容と傾向を分析し、政府でその情報を有効に活用していくべきではないか」と提案しました。

上川法務大臣からは「情報を共有していくことができ、また、それを施策につなげていくことができるように検討をしっかりと進め、役立てていきたい」と前向きな答弁がありました。森友問題とは異なり、法律相談が意味のあるものとなるよう、今後の政府の取組みを注視していきます。