28日深夜、平成30年度予算案が与党の強行採決により衆議院を通過。審議が紛糾した最大の原因は、政府が今国会で最も力を入れる「働き方改革法案」に含まれる「裁量労働制の拡大」について、政府の説明が誤っていたことです。厚労省は「裁量労働制の方が一般的な労働者より一日の労働時間は短い」と説明し、安倍首相もこれを利用してきました。「定額働かせ放題」で過労死を招きやすいとされる裁量労働制の印象を変えたかったようです。

しかし、野党が追及した結果、この説明に根拠がないことが判明しました。裁量労働制の労働者の労働時間は単純な平均値、一般的な労働者の労働時間は残業した日の最長時間の平均値を持ち出し、同じ土俵で比べていたのです。これでは裁量労働制の労働時間の方が短くなるのは当然です。官僚機構がこのような初歩的なミスをすることは考えられません。政権批判を防ぎ、無事に法案を通過させるため、悪意で「印象操作」をしたと思われます。

さすがに政府も「裁量労働制の拡大」を「働き方改革法案」から削除することを決めましたが、そのほとぼりも冷めないうちに、森友学園事件で新たな疑惑が浮上してきました。2日の朝日新聞によると、昨年国会に提出された、森友学園との土地取引に関する財務省の決裁文書は後から書き換えられたものであるとのこと。元の文書とは異なり、国と森友との交渉経緯がごっそり削除されたり、「特例的な内容」「本件の特殊性」「学園の提案に応じて鑑定評価」といった政権に不利な表現が抜け落ちたりしているとの報道でした。

この決裁文書には、関係者が多数押印しています。仮に報道が真実ならば、有印公文書を変造した罪で最高10年の懲役に当たり得るものです。ちなみに、印章や署名がない場合は最高3年の懲役です。また、公務員ではなく一般人が自分で作成した文書を後から書き換えたとしても罪に問われることはありません。刑法は、公務員がはんこまで押して作成した文書は社会的な信用が高いので、これを変造して悪用する行為に重い刑を科しているのです。

これまでも、あるはずの文書が廃棄されていたり、ないはずの文書が出てきたり、政権に都合のいいように公文書が扱われてきました。しかし、今回は重大犯罪の疑いがかかっており、これまでと次元が違います。2日に急遽開催された野党合同会議で、私はこのことを指摘し、財務省の官僚に対し、「もし報道が事実無根だというなら、財務省の名誉のため、直ちに朝日新聞に対して法的手段を取るべきではないか」と問い質しましたが、「事実関係を調査中です」というばかりで、報道内容を否定できませんでした。

政権を守るための「印象操作」に明け暮れ、「印章操作」という重大犯罪に手を染めたと疑われる財務省のエリート官僚の姿。もはや怒りを通り越し、哀れですらありました。