22日、東京では珍しく雪の降りしきる中、第196回通常国会が始まり、安倍首相による「施政方針演説」が行われました。ちなみに、総選挙直後に行われる特別国会や、例年秋に行われる臨時国会では、冒頭に行う首相の演説を「所信表明演説」と言います。

所信表明演説は当面の国政課題への対処方針を示すのに対し、毎年1月に始まる通常国会で行われる施政方針演説は、この1年の国政全般にわたる基本方針を示すものであり、内容は多岐にわたります。約45分に及ぶ今回の施政方針演説を聴き、欠けているものが二つあると感じました。

一つは、過去への「反省」です。政府側が「記録はない」と言い張った森友学園問題では最近になって交渉に関する記録が見つかっています。そのことへの謝罪や反省はまったくありません。介護や保育の処遇改善、受け皿づくりの実績が述べられましたが、首相がアベノミクスの「新三本の矢」に挙げていた「介護離職ゼロ」や「希望出生率1.8」がどうなったのか、説明がありません。もう一つの矢である「GDP600兆円」の方も、首相は7四半期連続の経済成長を誇っていましたが、目標の進捗状況については言及しませんでした。

ほかにも、「農村所得倍増計画」、「2%の物価上昇目標」、「2020年のプライマリーバランス(基礎的財政収支)黒字化」など、安倍政権下で数字を掲げた目標のうち、未達成のものや芳しい成果が表れていないと思われるものについて、触れられませんでした。政権にとって不都合な真実を国民に知らせない「隠蔽体質」は、相も変わらずです。

もう一つ欠けているのは、政府の仕事の「生産性」です。安倍首相は、中小・小規模事業者に対して生産性向上を求めましたが、首相自らの生産性はどうでしょうか。「2020年のプライマリーバランス黒字化」が達成できなくなったことから、首相は新たな財政健全化の目標を今年夏までに示すとしました。しかし、30兆円を超える新たな借金を含む来年度予算を審議する前に、財政健全化の道筋を示すべきです。

先の総選挙の公約に掲げた幼児教育の無償化も夏までに結論を示すとしています。北朝鮮問題は国難だとしていますが、防衛大綱の見直しは今年の年末に向けて行うようです。早急にやるべきことが遅々として進まず、生産性を欠いていると言わざるを得ません。国会での野党からの追及を避けるため、あえて結論を出すのを遅くしているとしたら言語道断です。

150日間にわたる通常国会ですが、これらの現政権の問題点を正し、国政を前に進めるため、1日も無駄にすることなく生産性の高い仕事をしてまいります。