13、14日と大学入試センター試験が行われました。これから受験シーズンが佳境を迎えますが、目標に向けた皆さんの努力が報われるよう、心より祈っています。

さて、若者が目標に向けて真剣な努力を積み重ねるこの時期、信じられない事件が立て続けに起きています。一つは、共に東京オリンピックを目指す後輩の飲み物に禁止薬物を入れ、失格に追い込もうとしたカヌー選手の問題。もう一つは、成人式を前に突然休業して新成人の門出を台無しにした振り袖の販売・レンタル業者の問題です。

前者では、オリンピック出場という「目標」のためには手段を選ばず、他人を蹴落とす姿勢、後者では、社名のとおり若者の「はれのひ」に貢献するという本来の「目標」をないがしろにし、若者に損害を与える姿勢が問われています。

「目標」への姿勢が問われるという意味では、黒田総裁が率いる日本銀行も同じです。5年前の就任の際、黒田総裁は「2年で2%」の物価上昇目標を掲げましたが、目標達成時期が7回にわたって先送りされ、いまだに1%にも達していません。

しかも、目標達成のため、先進国の中央銀行には例を見ない国債や株(ETF)、不動産投資信託(J-REIT)の「爆買い」を続け、金融市場を歪めているだけでなく、マイナス金利によって預金者の利息収入を減らし、地域金融機関の経営を悪化させるという弊害をもたらしています。まさに「目標」達成のために手段を選ばず、周囲を蹴落とすこともお構いなしという点で、先のカヌー選手と同様の姿勢ではないでしょうか。

自公政権もまた、「目標」への姿勢が問われます。5年前、平成32年(2020年)に基礎的財政収支(新たな借金による収入と過去の借金の元利払いによる支出を除いて計算した国と地方の収支)を黒字にするという目標を民主党政権から引き継ぎ、掲げていました。

しかし、消費の低迷によって財政再建のための消費増税(8%→10%)は2度にわたって計4年間の先送り、さらに補正予算による公共事業のバラマキや大企業などへの大幅減税により、基礎的財政収支は平成32年に黒字化するどころか大幅な赤字となりそうです。

「目標」を無視して国の借金を増やし、将来納税者となる若者にその負担を課すという点で、「目標」をないがしろにし、若者に損害を与えた先の振り袖業者と大差ありません。「人づくり革命」を若者に語る前に、安倍首相は自らを正しく律するべきです。