平成30年が幕を開けました。本年もご指導、ご鞭撻のほど、宜しくお願いいたします。

さて、平成10年は金融危機、平成20年はリーマンショックと、平成の時代は10年ごとに金融市場と実体経済が大混乱に陥りました。ここまで株価は好調ですが、日銀の行き過ぎた金融緩和は、金融機関の経営悪化やバブルの膨張・崩壊を招きかねません。同じ不幸が繰り返されないよう、日銀の金融政策はしっかり監視したいと思います。

また、今年は明治維新から150年の節目でもあります。4日の会見で安倍首相はこれに触れ、首相の地元である「長州の松下村塾に集った多くの若者たちが明治国家建設の原動力になった」と述べました。ただし、100年前の節目に触れることはありませんでした。

100年前の1918年、長州出身の寺内正毅首相から盛岡出身の原敬首相へと政権が交代。寺内内閣は、同じ長州の元老・山縣有朋が支える「元老政権」、「藩閥内閣」と言われ、首相の風貌に似た人形の名をとって「非立憲(ピリケン)内閣」と揶揄されていました。

これに対し、原内閣は、原を含めて大半の閣僚が衆議院の最大政党の党員であるため、「政党内閣」と呼ばれました。原は戊辰戦争で賊軍、朝敵とされた藩の出身者としてはじめて総理大臣となり、爵位を持たない「平民宰相」でもありました。

画期的な原内閣が誕生した背景として、①寺内内閣が原らとの合意に反して独断で「シベリア出兵」を行ったことや、②これをきっかけに一部の業者が米を買い占めて米価が急騰したため、「米騒動」と言われる民衆の暴動が起こったこと、などがあります。

100年後の安倍内閣も、寺内内閣と同様、国会を構成する政党を軽んじ、憲法に縛られず自由に権力を行使する「非立憲」的な政権です。最近の政府の外交姿勢を見ると、国会の議論なしで米国に追従し、「存立危機事態」や「重要影響事態」の名の下に「出兵」する危険が高まっているように思います。さらに、今年から米の生産調整(減反政策)が廃止され、農家や消費者が米の値段に翻弄されるという意味での「米騒動」が起きかねません。

「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という言葉があります。150年前だけでなく、100年前の歴史から学ぶことも多々あります。とりわけ、権力の独占と私物化は国民に不幸をもたらすこと、政権交代は想定外の形で起こり得ることは、現代にも通じる真理だと思います。逆境を乗り越えて総理に就任し、前任者の問題を解決した原総理の偉業に敬意を表しつつ、歴史の教訓を生かすべく本年も全力で国政に取り組みます。