年の瀬を迎え、今年の流行語大賞に「忖度(そんたく)」が選ばれました。この言葉が広く使われるようになったのは、森友学園への土地払い下げや加計学園の獣医学部の新設をめぐる疑惑が国会で取り上げられてからです。両学園への異例の優遇措置の背景に、官僚組織による安倍首相やその側近の意向の忖度があったかどうかが話題になりました。

実際、加計学園の問題では「総理のご意向」と書かれた内部文書が発見され、前川前事務次官もこれを本物だと認めました。しかし、その部下であった現役の文科省官僚は文書の存在自体をなかなか認めず、当時の義家文科副大臣に至っては、内部文書を流出させた職員が守秘義務違反で処罰される可能性までちらつかせ、真相は今も藪(やぶ)の中です。

国民の税金を使い、国民のために仕事をするべき官僚が、権力者の意向を忖度し、権力者にとって不都合な真実を隠ぺいしないようにするにはどうすればよいか。30日の衆院憲法審査会では、海外視察の報告の中で、スウェーデンでは公務員がマスコミに秘密情報を提供しても罰せられない「情報提供権」が認められるとの説明がありました。

同国では、マスコミが権力者に対する公的な監視装置として特に重要な役割を演じるとの認識の下、国防など一定の重要情報を除き、公務員が自分の判断で秘密情報をマスコミに流す行為は処罰されません。

私は、今回参考人として出席した武正公一前代議士に対し、「日本にも公益通報者の保護制度があるが、(情報提供した人物や情報の内容が官僚組織の中で知られる可能性が高く)あまり機能していない。スウェーデンでは守秘義務違反による刑事罰を免れるだけでなく、昇進や仕事上の不利益も課されない仕組みになっているのだろうか」と尋ねました。

その場で明確な答弁はありませんでしたが、後で頂いた資料では、「雇用主や職場の責任者は、自分の部下の誰が情報をメディアに提供したか調査してはいけない」という規定がスウェーデンにありました。こうした制度のおかげで、同国のマスコミは国民の知る権利に応えられています。「報道の自由度」に関する世界ランキングで日本の72位に対し、スウェーデンは2位であるのがその証しです。

今国会から、私は憲法審査会の委員に加わりました。今後、憲法改正に向けた議論が展開されそうです。しかし、憲法改正を最終的に決めるのは国民による投票です。国民が誤った判断をしないために、官僚が権力者の意向を忖度せず、守秘義務を果たすか国民のために情報提供するかを選択できるスウェーデンと同様の仕組みを検討したいと思います。