「成案ができたら直ちに答える。」、「事前に通告してもらえば立派な答弁ができる。」これまで金田大臣はこう答弁して野党議員の質問をかわしてきました。「成案」とは、政府がいうところの「テロ等準備罪」を定める組織的犯罪処罰法の改正案のことです。

法務委員会では、19日からその「成案」の実質審議が始まり、私も「事前に通告」して金田大臣への質問に臨みました。にもかかわらず、答弁を求めていない検事出身の法務官僚が委員会に出席し、答弁に立ちました。これは憲法63条が定める国会議員の質問権と大臣の答弁義務に違反します。委員会での質疑の中心を政治家同士の議論にし、国会審議の活性化を図った平成11年の国会改革にも反します。

この国会改革により、国会答弁は原則として大臣など政治家だけが行うことになりました。官僚が答弁できるのは「細目的、技術的事項」だけだと衆議院規則45条の3に定められています。この規則が定められてから20年近くが経ちますが、これまで質疑者の要求がないのに官僚が委員会に出席し答弁した例はありません。憲政史上初めての重大なルール違反がこの日、法務委員会で行われたのです。

これに対し、民進党の法務委員会のメンバーで抗議文を提出し、このような事態が二度と生じないよう求めました。私自身も21日の質疑冒頭でこのことに触れ、「規則違反の場合は直ちに質疑を中止する」と宣言し、質疑を始めました。大臣の答弁は相変わらず要領を得ないものでしたが、何とか官僚の力を借りず答弁を続けました。しかし、「テロ等準備罪の捜査はいつ開始できるのか?」との極めて基本的な質問に対し、大臣が答弁に詰まったところ、委員長が突然官僚に答弁をさせました。

これは明らかな規則違反です。私は官僚の答弁を阻止しようと抗議しましたが受け入れられず、冒頭の宣言通り、質疑を中止しました。ところが、自民党の議員から「今のはテロ準備行為ではないのか」と耳を疑うようなヤジが聞こえました。野党議員の国会での言論を「テロ」と言うなら、権力を批判するあらゆる言動に「テロ」というレッテルが貼られ、憲法の基本的人権である言論の自由や集会の自由はどんどん委縮してしまいます。今回の法案の真の目的は、「テロ対策」ではなく「言論弾圧」にあることを垣間見た瞬間でした。

さらに言えば、そもそも法案の責任者である大臣がまともに説明できない罪の内容を、一般国民が理解できるはずがありません。仮に罪の内容が明らかになったとしても、国会のルールすら守らない政府では、法律が拡大解釈されて国民が不意打ちをくらう危険が大きいと思います。審議は始まったばかりですが、すでに「テロ等準備罪」の欺瞞性と危険性は明らかであり、廃案にすべきです。