17日、決算行政監視委員会にて、「共謀罪」法案につき安倍首相らに質疑を行いました。このテーマでの首相への質疑は2月2日以来ですが、質疑の模様は前回同様、NHKで生中継されました。前回は、「共謀罪」により表現の自由や集会の自由が「萎縮」する危険や、「一億総監視社会」となる危険を質しました。

今回は、刑事裁判で「密室での共謀」の有無が争いとなった場合について、首相に質しました。うその証言によって「共謀」があったとされ、被告人が共謀罪の濡れ衣(えん罪)を着せられる危険があるからです。この問題を考える上で、参考になるのは森友学園の問題です。国会の証人喚問で、籠池理事長は安倍昭恵夫人から寄付として100万円を受け取ったと証言。これに対し、安倍首相は事実無根としつつ、100万円を渡していないことを証明するのは「悪魔の証明」だとして、昭恵夫人の証人喚問に応じようとしません。

そこでまず、私から「悪魔の証明とはどういう意味か」と尋ねました。安倍首相は、「やっていないことを証明するのは極めて困難だから、やったと言う側が物証等を挙げて立証する責任がある」と答弁。これを共謀罪の刑事裁判に置き換えてみましょう。共謀罪の裁判では、話し合った内容が問題となります。「密室での共謀」のように、当事者しか真実を知らない場合は十分あり得ます。

この場合、安倍首相の理屈では、「共謀をやっていないことを被告人が証明するのは極めて困難だから、共謀をやったと言う検察側が物証等を挙げて立証する責任がある」ことになります。しかし、「共謀をやった」という証言があれば有罪にできるのが日本の刑事裁判です。被告人は、何もしないわけにはいきません。事実上「悪魔の証明」を強いられるのです。

もちろん「共謀をやった」と証言する人も、共謀罪に問われる可能性があります。そんな危険を冒してまでうその証言をする人はいるのでしょうか?実は、今回の法案には「自首」した人が罪を免れる規定が設けられています。さらに、来年からは「刑事免責制度」が始まります。裁判所の許可があれば、自分が罪に問われることを証言しても有罪にはなりません。そうすると、捜査機関に弱みを握られている人は、自分の罪を免れるため、うその「自首」や「証言」をして他人に共謀罪の濡れ衣を着せる可能性があるのです。

今回の法案では、一挙に300以上の「共謀罪」を政府が設けようとしています。「えん罪の危険は大いに高まるのではないか」と首相に尋ねましたが、まともな答弁はありませんでした。共謀罪の疑いをかけられた国民には「悪魔の証明」を強いておきながら、自分の妻については「悪魔の証明」を理由に証人喚問を拒む。究極のご都合主義と言わざるを得ません。