6日、衆議院本会議で「共謀罪」を設ける組織犯罪処罰法改正案の代表質問が行われ、これから衆議院法務委員会で審議が行われることになりました。私も法務委員会に所属していますが、その前に仕上げなくてはならない重要な法案を抱えています。一つは、120年ぶりの民法改正案。私人間の契約のルールを定めようとするもので、とくに融資の際に第三者の個人保証を認めるか否かにつき昨年の臨時国会から議論が続いています。もう一つは、性犯罪の厳罰化を定める刑法改正案。被害者の方々から早期成立を求める切実な声が数多く届いています。

こうした国会提出済みの重要法案を先送りにし、「共謀罪」法案を急ぐのはなぜか?政府は東京オリンピックのテロ対策を理由に挙げます。しかし、テロ対策のために本当に必要なら、昨年の伊勢志摩サミットの前にこの法案を通しているはずで、全く説得力がありません。

他方で、「共謀罪」には大きく三つの危険があります。

第一に、国民の行動が「萎縮」する危険です。この法案が通ると、277の罪につき犯罪を実行しなくても罪に問えます。その中にはテロとは無関係なものも多数含まれています。例えば、学生の団体がインターネットで入手できる写真やイラストを使って宣伝チラシを作ろうと話し合い、それらをコピーしただけで「著作権法」違反の共謀罪が成立する可能性があります。共謀罪の成立範囲が広いため、仲間が集まって話し合うという当たり前の行動がやりにくくなり萎縮するのです。

第二に、捜査機関による国民の「監視」が強まる危険です。「共謀罪」は、犯罪場所の下見など、その目的を知らなければ罪に問えない行為が行われた時点で処罰するものです。そして、ある行動の目的が何かを知るためには、捜査機関は、監視カメラやGPS、電話やメールの傍受などを駆使して国民の言動を監視する必要があります。まさに「一億総監視社会」です。

第三に、「えん罪」が増える危険です。共謀の有無や内容は、関係者の証言で立証せざるを得ないことも多いため、違法・不当な取調べによってえん罪を招きやすくなるのです。

5日、TBSラジオの討論番組に出演した際、こうしたことを述べましたが、自民党の平沢代議士は捜査機関を信頼して欲しいというばかりでした。戦前の治安維持法の下での特高警察は言うに及ばず、最近でも無断の監視カメラ設置やGPS捜査が裁判で違法とされ、違法・不当な取調べによるえん罪事件がたびたび起きています。「テロ対策」という政府の説明は、「萎縮」、「監視」、「えん罪」の危険から国民の目を背けようとする姑息なやり口です。「共謀罪」法案は、廃案にしなくてはなりません。