21、22、24日と法務委員会で質疑を行い、閣議決定された共謀罪法案、司法修習生への給付金法案などにつき、質問をしました。「司法修習生への給付金」とは、司法試験に合格して国の研修を受ける1年間、生計費として毎月17万円程度がもらえるというものです。法科大学院ができる前も同様の制度がありましたが、法科大学院の運営に多額の税金が使われ、合格者も増えたため、平成23年からは希望者が借入れをする「貸与」になりました。今回の法案は、実質的には元の制度の復活です。

その目的を金田大臣に問うと、「法曹志望者の確保」と言います。確かに、この10年あまりで、司法試験の志願者は約10分の1に激減しました。政府は、「給付金」を設けることで司法試験の志願者を増やしたいというのですが、本当にそうなるのでしょうか?質疑の中で、現役の法学部生を対象とする政府のアンケート結果を分析して示しました。

法曹になるのをあきらめた学生にその理由を聞くと、「法科大学院を修了しないと通常は司法試験を受けられない仕組み」に起因するものが圧倒的に多く、合計すると回答者の93%がこれを選んでいます。「貸与」を挙げた回答者は9%のみです。さらに、法曹になることをそもそも考えていない学生にその理由を聞くと、前者を選んだのが合計64%、後者を選んだのがわずか3%でした。本当に法曹志願者を増やしたいのなら、「給付金」より「法科大学院を終えなくても司法試験を受けられる仕組み」の方がはるかに重要です。

このことを指摘すると、金田大臣は、「こういう精緻な資料を何枚か頂いてこの話に臨んだことは、残念ながら初めてだ」と答弁。つまり、肝心な情報が大臣に上げられないまま、今回の法案が国会に提出されているのです。これに限らず、安倍政権の下で、権力者に部下から重要な情報が上げられず、大問題になっているケースが最近相次いでいます。

稲田防衛大臣には、PKOの日報が廃棄されず一貫して保管されていた事実が伝えられていませんでした。安倍首相も、予算委員会で「妻が小学校の認可や土地の払い下げに関わっていたら首相も国会議員も辞める」と答弁していますが、森友学園側と昭恵夫人側がファックスやメールをやり取りしていた事実が伝えられていなかったように見えます。

官僚が権力者に真実を伝えないのは、「伝えても無駄」と思っているか、「伝えると責任を取らされる」と思っているかどちらかでしょう。前者は権力者の能力に原因があり、後者は権力者の人事管理に原因があります。いずれにせよ、権力者は苦しい立場に追い込まれますが、自業自得です。恐ろしいのは、真実が伝えられずに権力者が誤った判断をした結果、国民の税金が無駄になり、国家が誤った道に突き進んでしまうことです。