このところ衆参の予算委員会では、大阪で私立幼稚園を経営する森友学園の土地購入問題が焦点となっています。この土地はもとは国有地でしたが、森友学園が新規開校する小学校用地として購入を申し入れ、国が破格の条件で払い下げました。

当初はその値段すら不明でしたが、民進党などの追及で通常の売却価格より約8億円も低い1億円強であることが判明しました。値下げの理由として、財務省は、地下に埋まっていた廃棄物の処理費用を差し引いたためだと説明しますが、算定方法は不透明であり、値下げ交渉の記録は廃棄されたとして開示しません。

そもそも森友学園の幼稚園は差別的・偏向的な教育をしており、財政的にも余裕がありません。にもかかわらず、開校の認可や用地の取得で極めて有利な扱いを受けています。何らかの政治力が働いたと疑わざるを得ません。この点に関し、名誉校長だった安倍首相夫人のあいさつ文が、森友学園のホームページから削除されたことを指摘する同僚議員に対し、安倍首相は「印象操作だ」と声を荒げて度々批判しました。

自分は潔癖だと主張したいのでしょうが、それを証明したいのなら、当事者である森友学園の理事長らを国会に呼んで参考人質疑を行えばいいことです。これに安倍首相が応じない以上、「印象操作」を「盾(たて)」にして、追及を封じる意図を感じざるを得ません。

その陰で、安倍政権は過去3度廃案になった「共謀罪」法案の国会提出に向け、与党内で協議中です。この件について、私も安倍首相や金田法務大臣に質問しましたが、「今回検討しているのは『テロ等準備罪』だ。従来の『共謀罪』とはまったく違う。」と何度も答弁。報道も「テロ等準備罪」という罪名で大々的に報じ、あたかも「共謀罪」とは別物であるかのような印象を国民に植え付けてきました。

しかしながら、与党に示された検討中の法案には、「テロ等準備罪」はおろか、テロという言葉すらなかったというのです。根拠なく「テロ等準備罪」という言葉を広め、国民を錯覚させています。これこそまさに「印象操作」であり、法案に賛成する国民を増やすための武器にしています。いわば印象操作を「矛(ほこ)」としているのです。

ある時は「印象操作」を「矛」として世論を創り上げ、ある時は「印象操作」を「盾」として追及を封じる。安倍政権は、史上最も「印象操作」を駆使している政権かもしれません。しかし、「矛」と「盾」を組み合わせると「矛盾」です。安倍政権の大いなる矛盾に、国民も気付き始めています。