14、15日と大学入試センター試験が行われました。この冬一番の寒波の中でしたが、受験生の皆さんがこれまでの努力の成果を存分に発揮し、所期の目標を達成できることを祈っています。

私もちょうど30年前に大学受験に挑んでいました。今年と同じく、センター試験(当時は「共通一次試験」)の直前に成人の日がありました。東京で受験浪人していたため成人式には出ず、同年代の着飾った新成人を横目に、予備校の自習室で勉強していました。今もそうでしょうが、大学受験のために成人式に出ない若者は少ないため、肩身の狭い思いをしました。

しかし、数年後にはこれがごく当たり前のことになるかもしれません。1月20日から始まる通常国会で、成年年齢を18歳に引き下げる民法改正法案の提出を政府が検討しています。今国会で法案が成立すれば施行されるのは2020年ころとなりますが、施行後に成人となる18、19歳の若者のうち受験を控えた人は、成人式への出席をあきらめて受験勉強を優先する場合が多くなりそうだからです。

そして、問題はこれだけに留まりません。18歳以上が成人となれば、悪徳商法に引っかかって高額な商品を購入する契約を結んでも親が取り消すことはできません。一方で、お酒、たばこ、競馬などは従来通り20歳未満は禁止にする方向のようです。18、19歳の成人を保護するという趣旨であれば契約の取消しも認めていいような気がします。

そもそも今回の改正は、憲法改正の国民投票や選挙権の年齢が18歳に引き下げられたことを契機にしています。旧民主党も20年近く前に選挙年齢と成年年齢を18歳にする提言を発表していました。若者の意見を広く政治に取り入れるため、選挙年齢を引き下げることには異存ありません。しかし、選挙権を持つ人を無条件で成人にし、取引も自由に行わせる必要性は必ずしもないように思います。実際、民法の成年後見制度を利用する人には選挙権が認められていますが、その人が行った取引については後見人が取り消すことができます。

最近の18歳の若者の多くは、親の支援を得て高校、大学、専門学校などに通っています。経済や社会の複雑化、高度化によって、社会人として自立した生活を送るために必要な能力は今後も高まっていくはずです。国は、授業料の減免や給付付き奨学金など「人への投資」を充実させ、職業教育を含む高等教育を望む若者には、これを受ける機会をなるべく保障するべきです。成年年齢を即座に18歳に引き下げて自立の時期を早めるより、若者の自立を支える仕組み作りを優先しなくてはなりません。